『太陽の塔』

今更ながら、森見登美彦さんデビューです。


本好きな友人から、
「『森見登美彦』は面白いよ〜」
と前々から聞いてはいたものの、
日常に忙殺され、なかなか読む機会がありませんでした。


しかし、クリスマスプレゼントを買いに(自分宛てである)
本屋をウロウロしていると、
割と目立つところに、この『太陽の塔』が並んでいたんです。


太陽の塔 (新潮文庫)


やっぱ、大阪人としては、この『太陽の塔』ってタイトルだけで
何か魅かれるものがあるんですよね。
それに、
「そういや〜、○○ちゃんが『森見なんちゃら』面白いって言ってたなぁ」
と思い出し、



「え〜いい!!今日はクリスマスだ!!大出血サービスでぃ!
 てい!! もってけ泥棒!!」




と訳のわからない事を心の中で叫びながら、
『このマンガがすごい』と
太陽の塔
の2冊を購入して、(あ、チキンも買って)
家路へと急いだのであった・・・。



結論から言いますと、
めちゃくちゃ面白かったです。
モロ私ごのみでした。


話の内容自体は、


京大の農学部5年目で、しかも訳あって(その理由はよくわからん)
休学中の私(男)の冴えない日常を描いている、


というシンプルな内容なんですが、
その冴えなさっぷりや、妄想気味なところとか、
妙にシンパシーを感じるんですよね・・・。


例えば・・・


大学に入ってから三回生までの生活を一言で表現すれば、
「華がなかった」という言葉に尽きるであろう。
あらゆる意味で華がなかったが、
そもそも女性とは絶望的に縁がなかった




うんうん、わかるわかる!!
という感じです。



また、基本的に「恋愛に絶望的に縁がない」奴が嫌いそうな
クリスマスイベントについて、


先日、じつに不幸な出来事があった。
平和なコンビニに白昼堂々クリスマスケーキが押し入り、
共にクリスマスケーキを分け合う相手とていない、
清く正しく生きる学生たちが心に深い傷を負ったのである。
このような暴虐を看過することが出来ようか。
否、断じて否である。
(中略)
クリスマスを共に過ごす異性がいるということを、
それをさも学生の本分であるかのように声高に説くだろう。
黙れ、黙れ。学生の本分は学問である。
恋愛にうつつを抜かすヒマがあったらもうちっと勉強せいやコラ。
(中略)
クリスマスイブこそ、恋人たちが乱れ狂い、
電飾を求めて列島を驀進し、無数の罪なき鳥が絞殺され、
簡易愛の巣に夜通し立てこもる不純な二人組が大量発生、
莫大なエネルギーが無駄な幻想に費やされて環境破壊が
一段と加速する悪夢の一日と言えるだろう。



と、くるんですよ。(あ〜長かった・・・)
すごい分析だ。
まさに昔の私の胸中を代弁してくれているようです。
(え?今は違うのかって??今はもはや「悟り」の境地なんです)



それから、文章の言い回しや、表現の仕方が面白くって、
つい「ぷっ」と噴き出してしまう場面が多々ありました。


例えば、「私」がライバルっぽい男の「遠藤」の小物ぶりを
表現するのに、


こんな小猫のミルク皿程度の器しか持っていない男に
引導を渡されてたまるものか




ホッと安堵しているのが筒抜けで、濡れティッシュなみに内面の透ける男
だと私は思った。




自分が玉子豆腐のようにぷるぷる震えていたことなどおくびにも出さず、
あたかも自分の威光の前に私が罪過を悔いてひれ伏したがごとき情景を
彼女に伝えるに違いない




う、うまいな〜〜。
また、「私」が初めてできた彼女とクリスマスを迎えるワクワク感を
表現するのに、



初めてのクリスマスイブを前にして
脳天から尻までヘリウムを詰め込んだように浮かれていた




わかる!!この比喩!!素晴らしいです!!


面白かったので、一気に読んでしまいました。


クリスマスを嫌う「私」が主人公の話でしたが、
私にとっては、素晴らしい「クリスマスプレゼント」でした!!
(シツコイよ〜ですが、自分で買ったものなんですけどね・・・)




あ、そういや〜罪なき鳥を食べちゃったなぁ〜・・・。